藤崎麻子さん・51歳
ファスティング・サポート「アチャラボ」主宰
ファスティングアドバイザー&ファスティングマイスター
透き通るような肌に映える、仕立てのいいツイードジャケットにさり気なくデニムをコーディネートしたスタイルが、サラリと似合っている藤崎麻子さん。
コロナ期にライフスタイルの変化により、気が付いたら体重が増加。人生初のファスティングにトライしたことをきっかけに、今ではファスティングをサポートする「アチャラボ」を主宰。
取材を進めると、彼女の物腰のやわらかい雰囲気を裏付けるような、誰もが羨むキラキラのプロフィール以上に、壮絶なストーリーがあったことに驚愕する。
白金出身で女子大を卒業
憧れの大手広告代理店に就職
「女子中、女子高、女子大出身で、実家は白金。資格は運転免許証のみで趣味は茶道と書道。本当につまらないプロフィールだなと改めて実感したのは、就職活動のときでした。『あなたは見た目もまろやか系でつまらないから、ギャップを持ったほうがいい。面接時も、あえて今みたいに髪を巻いていって』とOG訪問でアドバイスされるほど(笑)」
大学1年の18歳から始めた茶道は4年間嗜む。
仕事と子育てで一時中断し、その後43歳で20年ぶりに再開する。
バブルが弾けた直後の95年。アドバイスが功を奏したのか、藤崎さんは大手広告代理店に就職する。
「仕事は男も女も関係ない世界ですし、本当にハードでした。結婚して、子供もできたのですが、今のように夫も子育てのために会社を休めるような時代ではなかったので、幸せな日々だったのですが、仕事、家事、育児、娘の受験と全てをひとりで抱えていたら、ある日、円形脱毛症になってしまって……。そこから20年、実は私、今もウィッグなんです。最初は髪の分け目にちょっとある、かわいいものだったのですがどんどん広がっていって、ずっと髪が生え揃わないんですね。辛いな、辛いなと思っていたのですが、今思えば、それがガンになるきっかけだったとのちに先生から言われました」
44歳のとき卵巣がんを宣告
人生のどん底を経験する
「ガンにもいろいろなパターンがあるかと思うんですけど、めちゃくちゃ辛いことがあると、その10年後くらいに顔を出すパターンがあるそうなんです。自分の場合、仕事と家事、子育てや受験を全てワンオペで行っていたときとほぼ同時だったのですが、当初それを受け入れるのがすごく嫌で葛藤していました。思っていた以上にガンが進行していて、すぐに手術、抗がん剤を投与することに。当時、小学6年生の娘にも自分がガンであることを伝えるべきか迷っていたのですが、病院のメンタルサポートに相談して伝えることを決意。そのときのアドバイスは、まず、ガンは伝染しない。病気になったのは、娘のせいではない、伝えているときは泣いてはいけない。自分は病気が治ると信じている。今思うと、その時が一番辛かったですね」
ガン闘病中の入院先の病院にて。
ガンになったときでさえも、自分を最優先させることができない。
子供の卒業式の幹事を任されていたので、それができなくなってしまったことを学校に伝え、夫に娘の学校行事の引継ぎをするなど、入院するまで慌ただしい時間を過ごす。
ガン告知されてから
1年間はずっと涙に明け暮れる日々
「辛い時って本当に逃げ場がないんですよね。私は卵巣がんで、がんの中でも予後がよくないと言われている病気なんです。当時は5年生存率が20%以下とも言われていて(※ガン治療の発展の成果で、今は卵巣がんのステージ3は、2022年には45%にまで上がったようです)自分がガンになったときに、まわりに同じがんの人がいなくて、それがとても心細かったですね。最初の1年くらいは、ずっと泣いていました。朝起きては“あ、自分がガンなのは夢じゃない”とため息をついて……。どこにも希望が見出せなくて絶望する日々でした」
「ただ悲しい気持ちって、段階を経て変わっていくものなんですよね。もう泣くだけ泣いたら、楽しい時間を過ごしたいと心が求め始めたんです。病気と向き合って、死ぬほど悲観したからこそ、そこに行きついたというか。好きな友達と美味しいものを食べて、ガンではない、他愛もない話をして笑う。そんなささやかな楽しい時間を過ごしているときは、ガンのことを考えないでいられる。私にとってのストレス発散はこれなんだなって。突き詰めてもどうしようもないことを考えていても辛くなるだけだと身を持って経験しました」
闘病で一カ月ほど入院しているときに、漫画を読むことで違う世界に没頭することができた。その世界に没頭して泣いて。その涙ですっきりしてぐっすり寝る。今の自分の状況を一度リセットして、違う世界に入るのもおすすめ。
言霊は本当に存在する
「娘に自分がガンであることを伝えるときにも、『ママのガンは絶対に大丈夫だから!』と言葉にすることって、自分にも言い聞かせることにもなるんですよね。いろんな本を読んだのですが、自分が言葉にすることで、自分の細胞もそうだって思うんですって。今でもひとりのときや、ウォーキングをしているときに『私のガンはますますよくなって、なくなりました』と、あえて口に出すようにしているんです。これは先生もおっしゃっていたのですが、よくガンに対して前向きな人のほうが治るというけれど、それは本当だと! 治療はどの病院でも同じ。前向きな人、笑っている人のほうが、間違いなく寛解に向かう傾向が強いそう。あなたもここまですごくいい治療をしているから、悲観しないでと。たまたま友人の紹介でいい病院に出会えて、運がよく、今も生きていることができていることに感謝しています」
人の心に寄り添える仕事をしたいと
ファスティングのサポートの仕事をスタート
空腹を感じない、無理せずファンスティングを楽しめると、お客様からも好評の酵素ドリンクのハーブクレンズ。最短3日間のコースからトライできる。
「ガンになったとき、寄り添ってもらえる人が少なく、すごく孤独だったんです。希望が持ちにくい人に、自分も寄り添える仕事をしたいという思いから、ファスティングのサポートするお仕事を始めました。きっかけは、コロナ期にライフスタイルの変化で一気に太ってしまったんです。私の場合、抗がん剤治療で痩せてしまった反動もあったかと思うのですが、気持ちが一気にどーんと落ち込んでしまって。自分がファスティングを経験してすごくよかったんですね。体重って減ると嬉しいじゃないですか。気持ちが前向きになるし、入らなかった洋服も入るようになって、顔の表情も、気持ちも軽くなる。そこから一念発起して、ファンスティングの勉強をして合格。去年の秋から、細々と仕事をスタートしたのですが、友人のおかげもあって、口コミで多くのお客様がきてくださいました。一度どん底を味わって、悲しい思いをたくさんしたからこそで、自分は人と寄り添えることに関しては、ほんの少しだけ自信があるんです」
人にありがとうと
感謝される喜び
「この世に何にもトラブルがない、健康なひとっていないと思うんです。みんな何かを抱えながら生きている。その中で、自分で自分をいい状況にシフトできる方法ってなんだろうってずっと考えていたんです。ガンの病気のほうは、少しずつ良くなってきて、ファスティングでデトックスしたこともあり、体調もすごくよくなりました。ファスティングのサポートのお仕事を始めてから、お客様に“痩せることができて、本当にありがとう!ファスティングという、いい時間が過ごせてよかった。ありがとう”と言われることが、本当にすごく嬉しくて」
ファスティング中は、運動をしたほうがいいそう。
藤崎さんはゴルフのラウンドも楽しむことも。イライラせずむしろパワーがでる!
週一で楽しんでいる、趣味のテニス。
「私が厳しい家庭環境に育ち、親からの期待も大きかったせいか、基本、卑屈な性格だったんです。自分にずっと自信がなく、自己肯定感も低くて。それが今では、たくさんの方から“ありがとう”という感謝の言葉をかけてもらえる。少しでも誰かの役に立てることで、自分の人生にも意味があるなって。病気の経験を通して、一度バチンと弾けたことで、私の新しい人生が始まった感覚があるんです。ファスティングでも何でもいいと思うんです。小さな成功体験をつくることが、普通に生きていけるための自信につながる。そのきっかけをサポートできたらと、“心を込めて”をモットーにした『アチャラボ』を、これから皆さんと一緒に大事に育てていきたいと思っています」
アチャラボ
text:MIYUKI NEZASA
FEATURE