ヘアサロン「アンベリール」代表
鈴木富美子さん・42歳
──美容師になったきっかけを教えてください。
父の会社が倒産したのをきっかけに
10代で「自立」を意識する
中学生くらいのときに美容師になろうと決めて、そのあとも迷わず美容師人生を
歩んできました。小学生のときに、父の会社がバブルの影響で倒産。
小さな会社ではあったものの、小さい頃から何の苦労もせず育ててもらっていたのですがそこからガラリと生活が一変。母も不動産会社で働き始め、私たちを育ててくれました。あるとき母に「女も手に職よ」と言われたことが心に残り、美容師になる思いがより強くなりました。
四姉妹の上から二番目ということもあり、家にお金を使わせたくなかったので奨学金で美容学校に通いました。母の背中を見て育ったので、働いていないと怖いという思いはいまだにありますね。
四姉妹の六人家族。右の着物を着ているのが鈴木さん。
バブルが弾ける前。
奨学金が返済し終わったのは
32歳のとき
美容師になってから32歳でその奨学金を全て返済し終わったときは、本当に嬉しかったですね。本当に心からホッとして解放されました。
奨学金といっても、借金をしているということと同じ。
美容師になってから辛いことがあっても、奨学金の返済もあり辞めようと思ったことは一度もなかったですね。
──晴れて憧れの美容師になっても半分以上は辞めて別の職業に転職するほど厳しい世界。鈴木さんが美容師になったときは、仕事も技術を先輩から見て覚える時代だった。
アシスタント時代の鈴木さん。
今、40代ですが、美容学校で30名いたクラスの中で、今も美容師を続けているのはわずか数名ほど。美容師になりたての頃は、毎日がとにかく必死で記憶がないんです。先生がいて、他のスタッフと一緒に協力しないと現場が回らなかったので頼れる先輩がいたこともあり、サロン内での人間関係はとても良かったのはラッキーでしたね。
美容師の修業時代は
お昼ごはんの時間が5分もあれば最高
他のサロンで5年間働いてから、表参道の老舗のサロンに入社しました。多少、前のサロンのお客様も来てくださったのですが、新しいサロンでのイチからのスタート。一日一日を精一杯生きていたという感じでしたね。自分のお客様がいないときは、先生の後ろについてヘルプをして勉強。1日がめまぐるしく過ぎていきました。お昼ごはんの時間も5分もあれば最高。お金もなかったので、自分でお弁当を作っていました。
──鈴木さんが5年間別のサロンで働いてから表参道の老舗サロンに入った理由とは?
和髪を得意とする鈴木さん。
「全国美容週間」で優勝したときの作品。
最初に勤めたサロンでヘアアップの勉強をしていたのですが、ある大会に出て優勝することができたんです。そこでもう少し違う環境で自分の可能性を広げたいという気持ちが出てきました。ちょうど美容業界誌を見ているときに、先生が出版されている本のチラシを見つけたんです。そのときに「あっ、私がやりたいのはこの世界だ!」と思い、すぐ先生のサロンに電話して入社できた経緯があるんです。自分が好きで憧れて入ったサロンだったので、頑張れたというのもありますね。
社交を大切にする表参道のサロンで
人生を学ぶことができた
本当に今までいた世界とは全く違う世界でした。お客様も上質な方が多く、お客様から学ぶことがすごく多かったのですね。表参道のサロンで美容師としての仕事はもちろん、「人生を学ぶ」ことができ、人間力を磨くことができたのは、本当にありがたく私の財産です。
紅白では、ある俳優さんの着付けを担当することもでき、両親もとても喜んでくれました。
スタッフと着物で。鈴木さん(写真・左)
そこから独立。同じサロンの先輩スタッフと一緒に
激戦区・表参道に2店舗サロンをオープンするまでに
スタッフ全員が毛髪アドバイザーの資格を持っている。
髪の美しさにこだわったスペシャリスト。
サロンオープン時のスペシャルスイーツ。
二店舗目のサロンは、当初期待もあってスタッフに全てをまかせようというスタンスでオープン。ですがコロナの影響もあり、半年間ほど赤字が続いてしまい、このままでは運営が難しい状況に。そこからは私たちが出向き、方向性を全て変えて、大人世代に客層を絞ってから少しずつ右肩上がりに。そこからスタッフの働き方の意識が変わりましたね。
年齢に関係なく、スタッフ一人ひとりに個性があり、本当に考え方が全然違います。その子に合うように導いていくかというのが、今の課題ですね。
私たちが、厳しいサロンで経験を積んできたこともありますし、「芯がきちんとある」ことをスタッフ全員に持ってほしい。はじめはスタッフに任せていたので、あえて口を出さないようにしていたのですが、言わないと伝わらないことも学びましたね。
──伝え方で注意している点はありますか?
私はけっこうダイレクトに伝えるようにしています。それが良いか悪いかは分からないですけど。ただ気分で言っているわけではなくて、きちんと理由があって伝えているというのを意識するようにはしています。
──サロンはスタッフ全員が毛髪アドバイザーの資格を取得。大人世代の
髪質の変化に対応したオリジナルのシャンプーとトリートメントを開発。
もともと私たちのサロンのコンセプトが「美しい髪は頭皮から」ということもあり、こだわり抜いて、完成までは試行錯誤して時間をかけて開発しました。温泉の藻が細胞を活性化してくれて、地肌を健康にしてくれるプロダクトに。傷んでいた髪にハリコシが出てきたり、少しクセ毛だった方も収まってきているお客様もいらっしゃいます。毎日使うものなので、いい素材のものを使うと髪質も変わります。
私たちは年に数回程度しか、お客様の髪に触れることができません。そのときはキレイにして差し上げることができても、普段のお手入れがとても大切になってきます。こだわり抜いたシャンプーとトリートメントが、お客様のお役に立てたら嬉しいです。
EMBELLIR初のオリジナルヘアケアシリーズ
Joie(ジョワ)
温泉藻もチカラで、地肌を健やかに整えてくれる。泡立ちもよく、オレンジ果実、ベルガモット果実の香りのブレンドした癒される香り。
Joie シャンプー 300ml
¥4,400(税込)
同 トリートメント 300ml
¥4,950(税込)
──今後の展望を教えてください。
人生、自分の考え方ひとつで変われる!
スタッフみんなが楽しく生きていけたらいいなという思いですね。
自分の不妊治療から、サロンスタッフ5人中3人の出産ラッシュ後に
二店舗目のサロンをオープン。同時に脱毛・エステサロン「mou」(ムー)をオープン
するなど、我ながら面白い人生を歩んでいる気がしています。
大人になってから、思考が変わりましたね。何かあっても、引きずらないタイプになりました。寝たら嫌なことは削除して忘れる。もともとそういうタイプではなかったのですが「自分の考え方ひとつで変われるんだ!」ということを、身を持って経験しました。今年で独立して10年。サロンの修業時代に色々頑張ってきたことが、今、形になっている気がしますね。
ストレス解消はゴルフ。始めて3年ほどになり、最近楽しくなってきたそう!
鈴木さんのInstgram
@suzuki.embellir
EMBELLIR fluer(アンベリール フルー)
www.embellir.jp.net
☎03-6433-5657
大人の品のあるスタイルづくりには定評がある。
カラーリングもヘナからケミカルなものまで幅広い選択肢があるのが嬉しい。
text:MIYUKI NEZASA