馬場智子さん・50歳
ジュエリーデザイナー
バーニーズ ニューヨークをはじめ、感度の高い有名セレクトショップにラインナップされている、人気アクセサリーブランドLa Soeur(ラ・スール)デザイナーの馬場智子さん。馬場さんのヘルシーな肌に映える、カラフル&シックが共存するアクセサリー使いは、固定概念を越えてボーダーレスに自由に人生を楽しんでいる馬場さんのスタイルそのもの。
自身のジュエリーブランド『マグノリアトゥエルブ』のイベントで
バーニーズの売り場に立つ馬場さん。
もともとジュエリーデザイナーになる前までは、
日本の航空会社で国際線のCAをしていたという馬場さん。
SENLY世代に知らない人はいない、大人気ドラマ『やまとなでしこ』全盛期の時代だ。
「国際線は、とにかくハードスケジュールで、ドラマのように合コン三昧の生活ではなかったですね(笑)。上下関係もとても厳しい現場ではありましたが、充実したCA生活でした。7年間で世界中のいろいろな場所も見ることができたし、もうやり切ったなと自分でも納得して30歳で辞めたんです。一回くらいは結婚しておこうと思って、専業主婦になったんですけど、3カ月で自分には合わないことが判明。これは何か仕事をしよう! と思っていた矢先、たまたま夫の妹がジュエリーを作っていたのをきっかけに、一緒にジュエリーブランドを立ち上げることになったんです」
フランス語で姉妹を意味する「ラ・スール」は、その名の通り、実際に姉妹がクリエイトしたブランド。セレクトショップに置かれるようになるまで、時間はかからなかったそう。
「それも本当に運がよくて! ブランドをスタートしてすぐにバーニーズさんが契約してくれたんです。当時は今みたいにSNSで自分の製品を発信するコンテンツがないわけです。異業種の世界ですし、もう営業も体当たり。本来のビジネススタイルではなかったと思うのですが、一か八かで代表電話に連絡を取り、担当の方に繋いでもらえたんです。ジュエリーなので、自分が持参して担当者に見てもらえたらいいなと思って。逆のこのスタイルが新鮮だったらしく、こんなやり方は初めてですって言われました。でもこのやり方で他のセレクトショップの契約を取ることができたんです。若さってすごいですよね。今は逆にできないですから」
30歳でスタートしたブランドは、今年で20周年を迎える。
インドの工場にて。
「ブランドを立ち上げてから10年ほど経ったときに、義妹が育児に忙しいことも重なり、ビジネスパートナーがインド人に変わったんです。今でも行っているのですが年に一回アメリカで開催される、世界中のジュエラーが集まる大きなジュエリーショーがあるんですけど、そこでの出会いをきっかけにインドでジュエリーを作ることになりました」
今やインドは世界中から注目。伝統的に受け継がれている、繊細な手仕事の刺繍技術に名立たるハイブランドも信頼しているほど、クリエイティブな世界には欠かせない。
「10年前は、インドを訪れても日本人は私ひとりくらいしかいなかったんです。みんなにジロジロ見られることが多かったんですけど、今ではインド人に“あなたはもう半分、インド人だ”と言われるまでになりました(笑)」
「インド人のファッションも、私が行き始めた頃は8~9割の女性はサリーを着ていたのに、今は半分くらいの人が洋服を着るように変わりましたね。三食インドカレーだったのが、イタリアンやメキシカンのレストランができて。次々とラグジュアリーホテルが建設され、街中がお洒落に様変わり。それがちょっと寂しい一面もありますね。インドらしさは残しつつ、変わらないでいてほしい魅力もたくさんあります」
いきなりインドでビジネスを始めることに、迷いはなかったのだろうか?
CA時代から
フライトはデリー担当希望
多分、前世はインド人なのかも?(笑)
多くのサンプルの中から、石をチェックする馬場さん。
「実は私、CAのときにも何度もインドに行っているんです。まわりのCAのほとんどがパリ、ニューヨーク担当を希望する中、私はデリー担当になりたかったの。その頃からインドに魅かれていたんです。多分、私の前世はインド人なんだと思う。インドに行くと、何か落ち着くんですよね。こうしてビジネスをするのも、自然な流れだったのかもしれません」
インドでビジネスをするにあたって、大変なことは?
「インド人って、サービス精神旺盛なんですよ!だから嘘をついちゃうというか。“この石ある? このパーツある? すごい探しているんだけど!”と伝えると本当は持っていないんだけど、“あるよ、あるよ!”とまずは答えてからそのあと一生懸命に探すの(笑)。それで最終的にやっぱりなかった。ってことになるんだけど、彼らはこの人に探してあげたい! という一心で嘘をついているんだなって私は感じているんです。時間を守らないなんて当たり前だし、約束の打ち合わせの時間から1時間待つことなんて普通。納期が遅れたり、サンプルでは最高の出来だったのに、量産したとたん、全く別のものになっていたりと、常に振り回されてはいるんですけど、10年もやっているとその距離感も慣れましたね。今は安定したビジネスパートナーと信頼関係を築けるようになりました」
10年後は、何をしていたいですか?
趣味のゴルフ歴は30年。
「振り返ると、私の人生、10年ごとに転機がきているんです。『ラ・スール』を立ち上げてから、10年後、新たにジュエリーブランド『マグノリアトゥエルブ』をローンチ。そしてその10年後が、ちょうど今なんですよ。10年後は海外に住んでみたいですね。60歳から10年くらい海外に住んで、70歳くらいで日本に帰ってきて最後は日本で骨をうずめたい。それが私の理想の人生ですね」
元国際線CAという経歴から、海外旅行の達人でもある馬場さん。現地のローカルになじむのが得意で、スリにあった経験もないそう。荷物はびっくりするくらい少ない中、ジュエリーボックスだけは大きいとか。海外に行くときは、本物のジュエリーではなくアクセサリーをたくさん持っていく派。シンプルなファッションでも合わせるアクセサリーによって雰囲気が変わる。愛用のジュエリーボックスはスマイソンのもの。
ラ・スール La Soeur (la-soeur.shop)
マグノリアトゥエルブ(バーニーズ ニューヨーク エクスクルーシブブランド)
マグノリアトゥエルブ(MAGNOLIA12)の商品一覧 | 公式通販 バーニーズ ニューヨーク|BARNEYS NEW YORK ONLINE STORE
馬場さんのインスタグラム lasoeur_jewel
text:MIYUKI NEZASA
FEATURE