シャンパーニュ アヤラの器用さは比較して味わえるアイテムが揃っていること
シャンパンを作る。使用できるブドウは限られています。シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ。たったこの3種類をブレンドするだけ。それなのに味わいの違いが明確です。それは使用するブドウの違いもありますが、もうひとつテクニック、ドザージュ、がどのメゾンも違う考えをもっているから、ということも挙げられます。
ドザージュとはシャンパンを仕上げる際、デゴルジュマン(澱抜き)を行います。この際目減りしますのでそこに糖分添加のリキュールを加えることを意味します。このドザージュの分量はシャンパンそれぞれにメゾンが考えて加えていくのです。一律に、ということではありません。
(デゴルジュマンについては改めてお話できたらと思います)
このドザージュで味を決めているというメゾンも多く、またEUの法律でもドザージュの割合でシャンパンの呼び方も変わる、と決められています。よく目にするBRUTはドザージュの分量が1L当たり6-12g入っています。EXTRA BRUTと書かれているものは3-6g。BRUT NATUREは0-3g。BRUTにもそれぞれ意味があるのです。
ご紹介するメゾン・シャンパーニュ アヤラはノン・ヴィンテージのスタイルのものでこのドザージュをしているもの、していないもの、2種類を展開しています。しかも両方ともブドウのブレンド比率は同じ。これはかなりレアなケースです。シャンパンにご興味がある方ならこれは2種類を同時に飲むべき!
ステンレスタンクも使用しています
ドザージュしていないシャンパーニュ アヤラ ブリュット・ナチュール
ブドウのブレンド比率はシャルドネ55%、ピノ・ノワール30%、ピノ・ムニエ15%。ドザージュはなし。ノン・ドザージュなのでシャンパンの名前にもナチュール、が入っています。
シャンパーニュ アヤラ ブリュット・ナチュール
問い合わせ:三国ワイン
味わいは本当に繊細。引き締まった酸味がありますが、これが優しい。ブレンドしている黒ブドウ・ピノ・ノワールとピノ・ムニエが熟成した味わいを盛り立てています。乾杯でいただくにもふさわしい仕上がりです。合わせるお料理、これは魚介系がベストと思います。簡単に楽しめるのは真鯛などの白身のお刺身に塩、エキストラバージン・オリーブオイルをかける。いわゆる「鮮魚のカルパッチョ」です。ぜひともお試しください。
ドザージュしているシャンパーニュ アヤラ ブリュット マジュール
こちらは見かけることが多いと思います。ブドウのブレンド比率はナチュールと同じシャルドネ55%、ピノ・ノワール30%、ピノ・ムニエ15%。ただこちらは1Lあたり6gのドザージュで仕上げています。いわゆるBRUTタイプです。
シャンパーニュ アヤラ ブリュット マジュール
問い合わせ:三国ワイン
味わいは、ナチュールとは全く別物です。同じブドウのブレンド比率なのに、ここまで違いがあるのか、と感心します。口に含んだ瞬間、優しく広がる果実のボリュームに穏やかな酸味が加わり、抜群のブレンド力を感じるのです。ナチュールの場合はキリっとした酸味が第一印象になるのでまずはここからの違いになるか、と思います。これがドザージュのあり、なし、の明確な差なのかな、とも。
同じ真鯛のカルパッチョでもこちらはレモンを絞るとより果実の旨みを引き出してくれると思います。
このようにドザージュのあり、なしを同じブドウのブレンド比率でできるのはやはりブドウのポテンシャルが高いから、だと思います。そもそものブドウが素晴らしくなければこのような比較できるアイテムを作り続けることは難しいと思うのです。
シャンパーニュ アヤラはピノ・ノワールの銘醸地・アイ村に1860年、メゾンを構えました。2000年以降、さらにシャルドネのスタイルを研究、果実のボリュームがしっかりしているピノ・ノワールとのバランスを非常に細かく分析しています。シャルドネのポテンシャルはシャンパーニュ アヤラの全アイテムすべての味わいをまとめ上げているのです。このシャルドネの素晴らしさはノン・ヴィンテージ、ヴィンテージ、スペシャルキュヴェ、どれをとってもしっかりと明確に味わえると思います。
シャンパーニュ アヤラを識るにはまずこの2本を同時に召し上がってみてください。そうすることでシャンパンが美味しいかどうか、ではなく、この味、好きだなぁ、という発見が楽しめると思うので。
こちらからも購入できます
Ask Best Wine
藤﨑 聡子
ワインジャーナリスト
ワイン専門誌「ワイン王国」を立ち上げ編集・企画・広告業務兼任する。フランス・シャンパーニュ騎士団より2009年ジャーナリスト最年少でオフィシエ・ド・シャンパーニュを叙任。現在はワイン、ウィスキー、食、旅などライフスタイルをテーマに幅広く執筆中。またスーパーバイザーとして韓国情報サイト・PIVImを監修。
PIVIm:https://pivim.jp/
text:SATOKO FUJISAKI