LIFESTYLE

江戸の粋に学ぶ淑女のお作法 #1

江戸の粋に学ぶ淑女のお作法 #1
今回初めてSENLYにご登場いただくのは前田眞里さん。SENLYプロデューサーの植松氏とは個人的なお付き合いがあり、美容やトレンドなどいろいろなことをおしゃべりする仲だそう。今回から6回にわたる連載で、ふたりのおしゃべりからSENLY世代のマナーや気配りなどさまざまな学びを得られればと思います。

植松氏(以下敬称略)
眞里さんは美容家としてご自分の欲しい化粧品の開発をしたり、女性のコミュニティを作ったり、女性の学びの場「青山なでしこ学院」創立メンバーでもあるのよね。このあいだお食事したときに話してくれた江戸の粋なしぐさや気遣いのお話がすごく面白かったから、ぜひ連載にしたいなと思ってお誘いしたの。

前田氏(以下敬称略)
ありがとうございます。江戸時代ってすごく独特なんです。戦国時代のような争いごとは少なくて、鎖国により外国からの侵略もなく265年間にわたって平和を維持。そんな世界的にみても稀有といえる平和な時代だからこそ、江戸では経済活動が活発化し、あらゆる文化が発展しました。

植松
文化って大切よね。とくに江戸の「粋」な文化は興味深い。

江戸の粋とは「人を思いやる心」

前田
「粋」って京都では「すい」と呼んで「その道に通じている」という意味をもつけれど、江戸での粋(いき)は「心意気」であり「思いやりの心」なんです。例えば江戸時代に贅沢禁止令が出されたとき、町民は四十八茶百鼠など地味な色の着物を着なければならなかったのだけれど、裕福な商家の娘などは裏に豪華な刺繍がしてあったり。襦袢などの隠れたところにオシャレするのが粋でカッコよかったの。
これ見よがしにひけらかさないとか、さりげない思いやりの心をもつことこそがカッコいいというのが「江戸の粋」なんです。

植松
日本人って一歩引いて善行をなすというか、上品で奥ゆかしいところがありますよね。他人が見ていようといまいと「お天道様が見てる」的な。そうじゃない押しつけがましいお下品な善人ももちろんいるけど。笑
眞里さんのいう「江戸の粋」には現代の私たちの参考になるいろいろな言葉やしぐさがあるんでしょう?

「上品な人」になるためには?

前田
例えば、私たちがよく使う言葉のひとつ、「上品」「下品」はもともと仏教の「九品(くぼん)」という教えから来た言葉とも言われてるんです。このほか「中品(ちゅうぼん)」もあり、生きているなかで常識を身につけて、徳を積んでゆくことで位が上がってゆくというもの。

植松
それがもとで現代の「上品(じょうひん)」「下品(げひん)」っていう使われ方になったのね。ランチとかでいかにもなブランド物を身につけていても上品にはなれないのね。

前田
江戸の粋な観点からいうと、粋な人は自分の審美眼に自信がありますから、その人の年齢、肩書き、身につけているものなどで人を判断することはしません。これ見よがしなオシャレをするのではなく、清潔感や教養、立ち居振る舞いに上品さを感じられる人が素敵ですね。
ちなみに私の師匠によると、素敵という言葉は、素晴らしくて敵わない。という意味だそうです。これ見よがしなファッションは下品です(笑)。しぐさや立ち居振る舞いが、人への思いやりにあふれている人こそ上品なんですよね。

商家は女次第
前田
あと、今は女性の地位が上がってきたと言われているけど、江戸でも「商家は女次第」と言われたそうですよ。
お店のご主人の奥方は、家事、育児をこなしつつ奉公人の世話や教育、お客様の応対、
ご近所付き合いなどにソツがない。そんなおかみさんがいる店は繁盛したみたい。

植松
むしろ今より江戸時代の女性の方がパワフルな感じなんですね。現代で言う社会的地位とかいう以前に普通にオールマイティな活躍をしていたのね。

前田
面白い言葉もあって、今でも例えばおかずを「お裾分けする」っていう言葉が使われているけれど、「お裾分け」という言葉は余ってしまったから良かったらどうぞ。というニュアンスになり、マネージメントができていないことになって粋ではない。
そこで周りにも配るつもりで余分に作って配ることを「お福分け」という言葉を使ったとか。
賢くて気配りのできるおかみさん。かっこいいですよね!

植松
「お福分け」知らなかったわ!
どのお話もとっても納得できるものだし、これからの人生の役に立ちそうね!
次回も眞里さん、よろしくお願いします。
           

【PROFILE】
江戸の粋に学ぶ淑女のお作法
前田眞里さん/CAとして日本航空に勤務後、結婚、子育てを経て「自分のための化粧品を作りたい」と16年前に株式会社ジュエルジャパンを設立。NPO法人江戸〇ぐさ元理事、女性の学びの場、「青山なでしこ学院」創立メンバー。noteにて「えどのいき」を発信中。
https://www.jeweljapan.jp/

text:AYAKO TAKAHASHI

2025.03.18
戻る