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江戸の粋に学ぶ淑女のお作法 #2

「江戸の粋に学ぶ淑女のお作法」連載2回目のテーマは「コミュニケーション」についてです。現代社会でも役立つ江戸時代のコミュニケーション術を「えどのいき」を発信している前田さんにお聞きしました。
植松氏(以下敬称略)
江戸の町でのコミュニケーションっていろいろ暗黙のルールがあったんですって? そもそも江戸の町ってどんなイメージなのかしら?
前田氏(以下敬称略)
以前にもお話した通り、江戸時代ってすごく独特なんです。とはいえ、実は現代の東京との共通点も多いんですよ。例えば、江戸は日本一インフラが整備されている町でした。経済も発展していて商人たちの活動も活発、遊郭や風呂屋で遊ぶなど遊びの文化も発達していたのです。道行く人や仕事や遊びで関わる人が多い分、他人との距離感が大切にされていたんですよ。
植松
人との距離感の取り方って難しいですよね。江戸の粋が感じられるコミュニケーション術ってどんなものがあるの?
プライベートには適度な距離をおく
~行先は聞かない~
前田
出会う人との挨拶はコミュニケーションの基本ですよね。
例えば近所の方とすれ違った際に「おはようございます」に続いて「お暑いですね」「先日いためた腰の具合はどうですか?」などといったプラスのひと言を心がけることで、より思いやりを感じることができるものです。
ただし「オシャレしてどちらにお出かけですか?」など、プライベートに立ち入るのは野暮というもの。習い事などであまり知らない方に「お子さんは?」「ご主人のお仕事は?」などをこちらから聞くのも粋ではないですよね。
植松
プライベートにかかわる質問って、今だと事によってはハラスメントって言われかねないものね~。
前田
そうですよね。それと、挨拶はあくまで手短に話を終わらせるキレのよさもポイント。
自分の都合で相手の時間を奪う
~時泥棒~
前田
いわゆる「タイパ」などという言葉も流行っているように時間は有限。時間が貴重なものということは誰にとっても同じことです。自分が出かける途中なのに親しいご近所の方が道端で話し込んできたり、知人が突然電話をしてきてなかなか話を切り上げられずに困ったことは誰にでもあるのでは。
植松
それ、すごくありますよね。
前田
あと、待ち合わせに遅れてくる人とか、約束をドタキャンする人など、相手のスケジュールを無視して時間を奪うことを江戸の粋では「時泥棒」っていうんです。「時泥棒は弁済不能な十両の罪」と言われていたんだそう。
植松
まさに、遅刻されたりドタキャンされたりすると、すっごく損した気分になるよね。「私の時間を返して!」っていう感じ。自分も仕事の上では「キャンセル2回で信用を失う」ってずっと肝に銘じてて、せっかく時間をあけてくれた相手に迷惑をかけないようにしてるかな。
軽い気持ちで言ったことを実行できるか
~口約束ほど大事~
前田
時泥棒も信頼関係と深いかかわりがありますが「口約束」はとても重要なの。
きちんとした契約などしなくても「今度~をしましょう」「~が手に入ったらご連絡します」など、それを楽しみにしている方はずっと覚えているもの。
植松
それもよくある! 「ゆびきりげんまん」っていうぐらい、約束って重要だよね。海外でも「ピンキープロミス」って使われてるし、世界共通で「約束」はその人の人間性の証。
前田
そうなんです。口約束こそ信頼関係の礎。「覚えていてくれたんですね」「当たり前ですよ」といった気持ちのよいコミュニケーションを江戸時代の人たちも大切にしていたんです。「ゆびきりげんまん」は、実は「ゆびきり、ゲンコツ一万回、ゆびきった」とかなり過激な表現をわらべ歌に取り入れられていることからも、それだけ人との約束を守らないことはいけないことだと子ども達に教えていたことがわかります。
植松
新生活が始まった春、気持ちも新たに人とのコミュニケーションを円滑にするためのヒントがたくさんある江戸の粋、役に立つことが多そう!
眞里さん次回もよろしくお願いします♪
【PROFILE】
前田眞里さん/CAとして日本航空に勤務後、結婚、子育てを経て「自分のための化粧品を作りたい」と16年前に株式会社ジュエルジャパンを設立。NPO法人江戸〇ぐさ元理事、女性の学びの場、「青山なでしこ学院」創立メンバー。noteにて「えどのいき」を発信中。
https://note.com/legit_hawk1794
https://www.jeweljapan.jp/