「江戸の粋に学ぶ淑女のお作法」連載5回目のテーマは「対人関係」についてです。現代社会でも役立つ江戸時代のコミュニケーション術を「えどのいき」を発信している前田さんにお聞きしました。
植松氏(以下敬称略)
商人が大活躍した江戸の町ならではの考え方や振る舞いっていろいろあったのでしょうね。
前田氏(以下敬称略)
そうですね。今回は対人関係についての当時の考え方をご紹介します。ビジネスシーンにも役立つ「なるほどな」っていうこともいろいろあるんですよ。
三方よし。
「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」というのが「三方よし」の考え方。自分だけが得をすればよいというのではなく、商売の相手はもちろんのこと、またその商売によって雇用が生まれたり、社会貢献になったりするような商売こそが長続きすると言われました。
植松
それってまさに現代社会においても同じことが言えますね。自分の得だけ考えて商売している人って、そのうちみんな消えてっちゃうものね。
前田
そうですよね。みんながハッピーになってこそお仕事も人付き合いも続くというもの。そしてもうひとつが、誰にもよくある「紹介者との付き合い方」です。
頭越えのしぐさ
誰かに紹介された方とお仕事することになったり、何かそのつながりからよいことに転じたりすることがありますが、その場合は必ず紹介者にひとこと言うのが礼儀というもの。その人を飛び越えて取引をしたり、その人を外して約束事をしたりというのは野暮な行為です。
植松
そうですよね、そのひとことがない人ってけっこう多いんですよね。「先日ご紹介いただいた〇〇さんとお仕事させていただくことになりました。ありがとうございます」とか「先日偶然お会いしたのでお茶しました」という軽いものまで、ひとことあれば、万が一その後何かあったときにフォローもできるし。
前田
人間関係、後から聞かされるのは気分が良くないので、ちょっと神経質くらいでちょうどいいと思います。人は感謝されると幸せホルモンが出るので、また良くしてあげようと思うものだし。報告なしに新たな付き合いを始めると、その人からの信頼を失い、後から痛い目に合うことになるので、頭越えをせず、ちゃんと筋を通すことが重要。だから、まずはその人が大切な人を紹介してもいい人物なのかを見極めるのも大事ですね。
植松
僕はそういう仁義っていうか信頼を裏切らないことを大切にしています。人脈泥棒って世の中にいっぱいいますけどね(笑)。
前田
人と人とのお付き合いは人生に最も大切なことのひとつ。人との出会いには感謝し、信頼関係を崩さないことが江戸時代の粋。それは時代が変わっても本質的に変わらない真実だと思いますね。
【PROFILE】

前田眞里さん/CAとして日本航空に勤務後、結婚、子育てを経て「自分のための化粧品を作りたい」と16年前に株式会社ジュエルジャパンを設立。NPO法人江戸〇ぐさ元理事、女性の学びの場、「青山なでしこ学院」創立メンバー。noteにて「えどのいき」を発信中。
https://note.com/legit_hawk1794
https://www.jeweljapan.jp/
text:AYAKO TAKAHASHI
2025.09.10